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ゆとり教育で中3生が苦手になったこと


 ゆとり教育と学校完全週休2日制で育った子供たちが、どんどん受験学年(中学3年生)を迎える時代になりました。その子供たちが、中3生の1学期(この後、受験勉強によって子供たちの学力は上がってくるため、ゆとり教育の害が最も大きく出る時期です。)に苦手にしていることをお伝えします。

 苦労していることと書くと、難しい問題をイメージされるかもしれませんが、私がここで書きたいのは、とても簡単なことなのに子供たちが苦労する(出来なくなっている。)ことです。  例えば、今の中学3年生は、54000×1800のような0の多いかけ算に時間がかかります。ミスをする子も多いです。なぜなら、以下のように右側を揃えて筆算するからです。

5ケタ×4ケタ

 実は、この計算を54×1000×18×100と考えて計算する方法も学習しているのですが、練習量が少なすぎるため、身についていません。そのため多くの中学生が、このような面倒な筆算をしています。付け加えると、75000÷5400なども、最初に0を消さない子が増えています。

 また、1.7÷0.54のような小数のわり算(主に理科で出てきます。)も、時間がかかったり、出来なかったりします。わる数の小数点を消して考える(わる数を整数に直す)ことを忘れていたり、わられる数の小数点の移動が出来なかったりします。これは、小学5年生の学習内容ですが、やはり練習量が足りないので中3の春の時点では、かなり高学力な生徒でも出来なかったりします。

 確かに、中学校では分数が中心になるので、小数のわり算は、あまり出てくることがありません。それに、小数を分数に置き換えて、かけ算に直して計算してからわり算をすれば、整数のわり算になるので、何とかクリア出来ます。実際、そのようにして解く子もいます。

 でも、小数のわり算が出来ないことそのものに問題があります。もし、将来的には電卓があるから少々の計算くらい出来なくても大丈夫というのであれば、漢字だって電子辞書がありますし、他の知識も携帯電話でネットに接続すれば即座に手に入りますから、何も勉強しなくて良いということになってしまいます。
 ですが、普通の小学生が学習する程度のことが出来なくなって良いはずがありません。そんなことを許していれば、人間が本来持っている他の動物とは一線を画す高度な思考力が衰えてしまうのは、間違いありません。

 具体例に戻ります。数学の文章題のA地点からC地点まで1200mの距離をA地点を出発して途中のB地点まで分速100mで進み、B地点からC地点まで分速60mで進んだ結果、14分かかりましたという問題は、速さに関する基本問題です。また、濃度5%の食塩水をXgと濃度8%の食塩水をYg混ぜて、濃度が7%の食塩水を300g作る問題も、割合に関する基本問題です。どちらも以前の中学3年生なら、夏休みに普通に解けていましたが、今の中3生は、ほとんどの子が解くことが出来ません。

 これらの問題については、中3生が解けなくなった理由は簡単です。お母さんの時代は、中3生までに一次方程式と不等式と連立方程式と連立不等式を習っていましたが、今では一次方程式と連立方程式しか学習しなくなったので、文章題を解く機会が少なくなったためです。さらに、中間テストを廃止した学校や2学期制を導入した学校が増えたことで、定期テストが減ったので、子供たちが真剣にテスト勉強をする時間も減りました。

 ゆとり教育で、時間をかけてじっくり学習すれば、身につくと考えられていたこと(基礎・基本)が身についていないのが今の学校教育の現実です。この一つ前のコラムで教頭先生のテストについて書きましたが、教頭先生も、自分で指導した範囲の内容についてきちんと理解させることが出来ても、正しい結果を導くための子供たちの基礎計算力が下がっていることに気付いていないことが、テスト結果が悪くなる原因ではないかと思います。

 その他にも、地理の教科書で学習する地域が激減した(世界地理で、きちんと学ぶのは3カ国のみ)ために、子供たちの世界地理の認識も著しく低下しています。子供たちもテストに出ないところは勉強しようとしないからです。

 こんな文章を読んでも、多くのお母さんが、にわかには信じられないと思います。たとえ我が子が小数のわり算が出来なくても、それは自分の子供の出来が悪いと考えてしまうと思います。ここにゆとり教育の問題点があります。ゆとり教育の是非を問う方々も、これほどの現実があることを知っている方は少ないと思います。多くの中学生と長期に接してきた方でないと実感出来ないことですから。

難しいですね。  

2006/12/31

 

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