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子供たちの未来(長文です。)


 子供たちの未来、日本社会はどうなっているでしょうか。少し堅苦しい内容になりますが、子育てに大きな役割を持っているお母さん方に、是非、考えてほしいと思います。

 私がここでお伝えしたいことは、思想的なことではありません。単に、近い将来(10〜20年後)、日本社会がどうなり、その新しい時代を生きていく子供たちが、これからどう成長していなければならないかを、お母さん方に考えてほしいと思っています。

 ほんの少し先に起こることは、もう既にはっきり分かっています。例えば少子化、高齢化などです。その他にも、実は少し未来に起こる多くのことが、今の時点でも明らかになっています。

 日本社会に近い将来起きることを、知っている人は知っていますが、その人達が大きな声で、その内容を世間に伝えることはありません。解決策を伝えることなく、マイナス面だけを伝えて、多くの人々の不安を煽っても仕方がないからです。


 私たち日本人の戦後の豊かな暮らしを支えてきたのは、親世代には懐かしい響きのある「加工貿易」です。諸外国から、原材料を安く購入し、日本人の器用な手で加工することによって、付加価値を高め、高額で輸出することで、多くの外貨を稼ぎ、それによって日本全体が豊かになりました。

 ところが、近年、この構図が大きく変わってきました。

 その原因は、近隣諸外国の技術力が大きく伸びてきたことです。身近な電気製品の大半が、すでにメイド イン ジャパンではなくなっていることからも、そのことは明らかです。つまり、外国で作られた製品の多くが、日本人が満足出来るレベルになっているということです。

 そして、それらの製品を作る労働者は、国によって違いますが、日本人の4分の1や10分の1の賃金で働いています。人件費が、とても安いため、製品の価格も安くなります。性能面で日本製品と比べても、それほど見劣りしないので、世界の中で日本製品の一人勝ちという構図は、すでに終わっているといって良いと思います。

 加えて、IT革命をベースとする世界のグローバル化が、今、マスコミをにぎわせている格差社会を作り上げました。この格差社会の原因の正しい読み取りが大切です。

 格差社会について、NHKが「NHKの解説員」を中心とした討論番組を開いていましたが、司会のアナウンサーが、最初に一番ベテランらしき解説員に、「格差社会の原因は何でしょうか。」と問いかけると、その解説員は、とても控えめに「世界のグローバル化が、大きな要因になっていると思います。」と答えていました。そして、とても簡単な説明をしただけで、司会者も解説者も、そのことに深入りしないで、専門分野別に分かれた話題に入っていきました。

 おそらく、この解説員の方は、世界のグローバル化(情報伝達や流通の質が高まり、国と国との距離が実質的に縮まることと言い換えても良いと思います。)が、日本の格差社会の要因となっていることを強く理解していながら、解決策の提示出来ないテーマに深入りすることを避けたのだと思います。

 では、なぜ世界がグローバル化すると、日本社会の格差が拡大するのでしょうか。冷静に考えると、答えはとても簡単です。

 我々日本人は、お互い日本人同士で比較をするので、普段得ている自分たちの収入に不満を持っている場合が多いですが、日本人の平均賃金は、世界の標準からするととてつもなく高い水準になっています。アメリカや一部の先進国を除けば、イタリアやフランスですら、日本人よりかなり平均年収が低いのが現実です。まして、近隣のアジアの国々では、日本人の何分の1という低賃金で、働いている人がほとんどです。

 世界がグローバル化し、情報の伝達が素早く低料金で出来るようになると、知識労働に関しては地方のハンディキャップは小さくなり、同程度の質の仕事しか出来ないのであれば、世界でもっとも安く引き受けてくれるところに仕事が流れ込むことになります。(例えば、ホームページのデザインの作成を、中国人デザイナーに格安で注文するというようなことも、可能になってきます。)

 実際に形のある製品を作る仕事でも、従来は、安い賃金で働いてくれる労働者を簡単に見つけることは出来ませんでしたが、情報のインフラ(情報のやりとりを容易にする社会基盤として、インターネットの普及も大きいと思います。)が整ったことで、世界でもっとも低コストで生産してくれる会社を見つけることが容易になったのです。そして、その価格に輸送費を上乗せしても、日本国内からの調達価格を下回った場合、企業がためらうことなく、その外国の会社に発注するのは明らかです。(価格破壊を起こしている製品の大半が輸入品です。)

 以上のことから、ご理解いただきたいのは、格差社会と呼ばれているものは、今、マスコミで大きく喧伝されているような単なる勝ち組み・負け組みということではなく、世界のグローバル化によって、日本人の総賃金化が起こるというのが真実の姿です。

 一握りのIT長者をバッシングしても、実は何の解決にもなりません。世界の枠組みの中では、日本人は、今も豊かな民族で、それが、世界のグローバル化によって、日本人の生活(賃金)も世界標準に近づいているだけです。そして、この世界のグローバル化の進行を止めることは誰にも出来ません。

 ですから、日本の企業は自己防衛の手段として、工場の海外進出(賃金の安い労働者の確保)に励んでいます。また、国内では、正規社員の比率を下げ、パート、契約社員、フリーターの比率を高めることで、全体の人件費を下げる努力をしています。


 悲しいことですが、日本社会が世界標準に近づいていくことは、徐々に子供たちが「豊かさの反対方向」に向かっていくことに他なりません。

 つまり、1ヵ月5万円で働いてくれる外国人労働者が増えれば、日本人労働者も、同じ金額で働かなければならなくなっていくということです。いくら日本国政府が日本人を守ろうとしても、日本製品が売れないのであれば、日本社会が世界の中で有数の豊かな国であり続けることは出来ません。日本人だけを雇用し、日本人だけを守ろうとしても、自分達の首を絞める(日本製品が売れなくなる)ことになるのは、火を見るより明らかです。

 以上のことを踏まえて、お母さん方の役割は何でしょうか。公務員になることや薬剤師などの資格を取ることを目指させるのがよいのでしょうか。でも、日本全体の平均賃金が下がれば、公務員といえどもそれに準ずる給料にならざるを得ません。

 また、薬剤師などの資格も、皆が皆、有利な資格だと思えば、その時点で有利な資格ではなくなります。雨後の筍のように、続々と出来た私立大学の薬学部が定員割れを起こしていることからも、ご理解いただけると思います。大量の薬剤師が誕生すれば、やはり数少ないパイ(職場)の取り合いになるでしょうし、その結果としてより賃金の安い人材を雇うことになり、結果として高付加価値の資格ではなくなってしまいます。

 それなら、子供たちをどのように育てれば、この変革の時代を生き抜ける大人になるのでしょうか。私の答えは、一つです。

 まず、しっかり勉強させること。この情報化社会の中で、正しい情報を選別し、理解出来る知力を備えることが不可欠だと思います。また、日本社会が、高付加価値の工業製品を生み出し続けるためにも、ゆとり教育に甘んじることなく、世界に通用する学力を身につけなければならないと思います。

 あと、学力とは別に、変化に対応出来る柔軟な思考力も必要だと思います。環境が刻々と変化していく時代に、どれほど学力があろうと、その環境の変化に対応出来る柔軟性がなければ、生き残ることは出来ないと思います。なぜなら、一流企業に就職出来れば、一生安心という時代は既に終わっているからです。(その他にも、新しい時代を生き抜くために必要な能力は多々ありますが、今回の「子供たちの未来」というテーマからはずれてしまうので、ここでは触れません。)

 もう一度、このような時代背景の中での、お母さん方の役割について考えてみます。

 実は、子供たちは我々大人世代が経験したことのない未知の世界を歩んでゆくことになります。つまり、お母さん方が成功の道筋(具体的な進路)を教えることが出来ない世界です。(長年の家業をお子さんに引き継ぐことを断念せざるを得ない業種も増えています。)

 だからこそ、どのような世界になろうとも、自分の頭をしっかり使って考え、より正しい判断が出来るように子育てをしていく必要があります。お母さんの役割は、子供たちの成功のルート(道筋)を決めることではなく、成功するにはどうすれば良いかを、自分で考えられる子に育てることが必要なのだと思います。

 つまり、本を読むことが好き、方程式を苦痛に思うことなく解ける、世界地理に精通している、日本の歴史に興味がある・・・、そのような子に育てることが出来れば、後は、子供たちが自分の人生を自分で判断しながら生きていくのではないでしょうか。そのために、日々の家庭学習をこつこつと頑張らせてあげてほしいと思います。

 最後まで読んでいただきありがとうございます^^。このコラムに関して、何らかのご意見・ご感想がありましたら、是非、質問掲示板の方へ書き込んでいただけたらと思います。よろしくお願いします。  

2007/04/18

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格差社会を解消するための提案(当サイトのテーマである学力アップとは、無関係なコラムです。)