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赤い靴をはかせていませんか?


 赤い靴という童話がありますが、私の中では、昔、太田裕美さんが歌っていた「赤いハイヒール」という歌の中の歌詞(作詞 松本 隆)の方が印象深いです。その中で、「マニキュアの指 タイプライター ひとつ打つたび夢なくしたわ ・・・ 死ぬまで踊る ああ赤い靴 いちどはいたらもう止まらない ・・・ 赤いハイヒール」と歌われるのですが、まさに赤い靴をはいている小・中学生が多くなっていると思います。

 歌の意味は、高校を卒業してOLとして働きはじめた少女が、会社という社会の渦に巻き込まれて自分を見失い夢や希望をなくしてしまうこと。そして、その流れの中から抜け出せない様子を表していると思います。まあ、歌謡曲ですので最終的にはハッピーエンドになりますが。

 この歌の内容と今の小中学生のどこが重なると思われますか?

 小学校の低学年でサッカーやバスケットボールなどのスポーツを始めて、そのままずっと中学校・高校と一つの種目だけをやり続けることが、私の目から見て赤い靴をはいているように思います。

 ただし、野球のイチロー選手・松井選手・松坂選手、ゴルフの宮里選手・石川選手、卓球の福原選手、フィギュアスケートの浅田選手などのように、家庭内にしっかりした方針があり、自らの夢(イチロー選手が小学生の時に書いた作文は有名です。)をかなえるために、目標に向かって頑張るのは、赤い靴をはくことではありません。

 私のいう赤い靴をはくということは、小学校の低学年の時に、少しダイエットをさせようとか、元気が余っているからとか、友達に誘われたからなどのように軽い気持ちで始めたスポーツから、抜けようとしても抜けられないことを指しています。

 最初は軽い気持ちで始めたにも関わらず、熱心な指導者に当たって、本人の技能が高くなり、中学校への進学と同時に先生や先輩から誘われて、中学校でも続けざるを得なくなり、高校進学時も高校から推薦入学の声がかかり、同じスポーツを続けてしまうという構図になっています。

 本人が、そのスポーツを心底気に入っていて、他者からの誘いのあるなしに関係なく自ら望んで入部するのであれば問題ないのですが、本当は本人に続ける意志がなかったにも関わらず、その流れから抜け出せないことに問題があると思います。

 子ども達自身も、自分が得意なスポーツですので、他のスポーツを新たに始めるよりは入りやすいこともあり、本当は負担の軽い部活に入りたいと考えていても、先輩や友だちに誘われるままに厳しい部活に入り、自分の持ち時間の全てをそのスポーツに捧げてしまうことになります。

 このような流れの中でも、体力的に余裕のある子もいます。そのような子は、厳しい部活に入っていても自分の持ち時間をしっかり作って、他の活動に積極的に参加していたりします。でも、体力的な負担が大きすぎる子は、体力の回復に時間がかかるので、小・中・高を通して自分の持ち時間がほとんどない学生生活を送ることになります。

 体力に余裕のある先輩や友だちに誘われて、自分の自由な時間を持つことなく流されていくのは、不幸なことではないでしょうか。もし、お子さんが、一つのスポーツとそのスポーツによって生じる人間関係に振り回されているようであれば、もう少し冷静に考えてみて下さい。

 とはいっても、赤い靴ですから一度はくと、もう脱ぐことは出来ないかもしれません。心理的にも、最終的に自分が選んだ結論が、最も良い選択だったと思うのが人間なので、自分が赤い靴をはいていると感じることすらなく、はき続けてしまうのが現実ではないでしょうか。

2007/11/12

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