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学力低下の本質が分かるので、
内田 樹先生の「下流志向」を
読まれることをお勧めします。


 タイトルに逆らっていますが、この内田 樹(うちだ たつる)先生の「下流志向」サブタイトル「学ばない子どもたち 働かない若者たち」は、このホームページをご覧いただいている全ての方にお勧め出来る本ではないかもしれません。

 ネットで注文される前に、是非、一度書店で手に取って中身に目を通してから、購入するかどうかを決めていただければと思います。

 本来は、内田先生の本を読んでいただくのが一番良いのですが、あまり時間が取れない方のために、私なりに内田先生が「下流志向」に書かれている学力低下の問題点をお伝えしたいと思います。ただし、私の解釈が100%正確に内田先生のお考えを再現出来るものではないことをご承知いただいた上で、ご一読下さい。

 まず、現代の社会の風潮となっている損得勘定(注1)から、子供たちが「なぜ勉強しなければならないの?勉強するとどんな得があるの?」と問いかけるようになった。この問いそのものが間違っていると内田先生は論じています。

 なぜなら、学習によって、どんなことを得るかは、学習がかなり進んだり、学習を終えた後に分かるもので、学習のはじめや学習途中の者が、それを理解出来るものではない。そのため、勉強にどんな得があるかを問われても、それを子供たちに理解出来るように説明出来たりはしない。それが理解出来ないから、それらが理解出来るようになるために勉強しなければならない。勉強とは、本来そのようなものである。

 にも関わらず、お得(子供たちが直感的に分かる利益…目の前の学習内容が、自分にとって、どのような意味があるか。)の中身を理解させてもらえないのであれば、勉強しなくても良いと思わせてしまった現代社会の風潮に問題があるということです。

 また、子供たちが生まれながらに消費者(注2)としての人生をスタートさせてしまったことにも、子供たちが学ばなくなった原因があり、そのために、今の子供たちは、まじめに授業を受けることを拒否しているとのことです。さらに、これほどの強い抵抗は、ただ単に学びたくないという程度の意志ではなく、学ぶということに全身全霊の力を込めて抵抗するように社会から命じられているからだと書かれています。

 私が、「下流社会」の内容で、特に共感し、お母さん方にも気付いてほしいのは、この点です。今の子供たちは、勉強をまじめにするなと社会から命令されているようなものです。そして、私の感じる限りでは、多くのお母さん(当サイトを熱心にご愛読いただいているお母さん方は該当しません^^;。)が、この命令の片棒を担いでいるような気すらします。

 内田先生の論拠は、とても深く、短い字数でまとめることは出来ませんが、私が日常生活でテレビや新聞などから受け取るメッセージも、子供たちに勉強しなくてもいいよと訴えかけているようにしか思われません。なぜこれほどまでに勉強をしてこなかったり、勉強からリタイヤしたりした成功者の話を頻繁に持ち出すのでしょうか。そのような成功者はごく稀にしかいないのに、まるで成功者の大半が、勉強嫌いであったかのような扱いは、それらを見る多くの子供たちに大きな誤解を生じさせるに違いありません。

 さらに言えば、マンガやテレビなどで、勉強にそっぽを向いて生きる生き方がかっこよく、勉強をこつこつ頑張ることがダサくてかっこ悪いように表現されていることが多々あります。今時の青春ドラマで、最後に悪役となるのが頭のいい奴(成績は良いが性格の悪いイヤな奴)なのは、定番中の定番になっています。

 これほどまでに社会が勉強しないことを推奨しているのであれば、子供たちが、それに全力で従うのも無理はありません。子供たちは、その純粋な心で、勉強するなという社会からの命令に従っているだけです。

 内田先生は、子供たちが教室で、体を無理にうしろにねじ曲げて、教師の話を意地でも聞くものかとする行動は、単なる無為な行動ではないとしています。それらは、何が何でも勉強するなという社会の命令に従おうとする強い意志の表れであり、そのように振る舞うことがかっこいいことだと信じているからだということです。

 このように信じて生きている今の子供たちは、自らの学力を低下させる努力を、日々、行っているということです。一生懸命努力して学力を下げていく。日本社会に生きる子供たちは、何と可哀想な合意のもとに生きているのでしょうか。

 多くの方に、内田先生の書かれている学力低下の仕組みに気付いてもらい、この悲しい現実を変える努力を始めてほしいと思います。

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注1 損得勘定…内田先生が、等価交換と表現されているところを、勝手に損得勘定と言い換えています。等価交換の意識が子供達に及ぼす影響については、「下流志向」をご覧下さい。

注2 消費者…内田先生が、消費主体と表現されているところを、勝手に消費者と言い換えています。子供達が消費主体(買い手)として学校に登場することが、学力低下に及ぼす具体的な影響については、「下流志向」をご覧下さい。

2008/04/08

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